サービス残業は会社側の責任だけではありません。
従業員の中には生計の為や評価の為という理由で、会社で決められた労働時間が過ぎてもなかなか帰らず、いつまでも残業する人間がよくいます。このような従業員には「残業=決められた時間内で仕事を処理できない人」という会社の方針・評価を理解させる必要があります。
このような従業員を放置すると、会社の経費の無駄使い、作業効率の低下、職場環境・雰囲気の悪化などの弊害が出ます。

サービズ残業を減らすには

1.労働時間の把握・管理

労働時間を把握・管理する代表的なものとして、タイムカード、パソコン入力、自己申告が挙げられます。それぞれメリット・デメリットがありますが、実態をきちんと把握・管理することが大切です。

2.会社の所定労働時間を見直す

時間外労働に対する割増賃金は、原則として1日8時間、1週40時間を超えない場合には支払う必要はありません。ですから、会社の所定労働時間が1日8時間、1週40時間未満の場合は、所定労働時間を見直すことにより、残業代の支払いが軽減されます。

休日労働に対する割増賃金は、週1回以上の法定休日に支払えばよいことになっています。ですから、週休2日以上の場合で、法定休日を決めず、休日割増を支払っている場合にも、残業代の支払いが軽減されます。

※所定労働時間の引き上げは、労働者にとって不利益変更に該当するので、事業主が一方的に行うことはできません。合理的理由や社員の同意などを必要とします。

3.会社に合った制度を導入する

現在の多様な働き方に対応するために、さまざまな労働時間に関する制度が取り入れられています。自社に合った労働時間制を導入することで、これまで時間外労働として対処しなければならなかったものを合法的に時間外労働から除外できます。

  1. 変形労働時間制
    1年単位の変形労働時間制
    1ヶ月単位の変形労働時間制
    1週間単位の非定型的変形労働時間制
  2. フレックスタイム制
  3. 裁量労働制
    事業場外労働
    専門業務型裁量労働制
    企画業務型裁量労働制

4.残業を許可制にする

残業許可制度とは、残業を行う従業員に事前に会社に申告させる制度です。残業を行う従業員に、

  • 残業で行わなければならない業務上の理由
  • 残業を行う業務内容
  • 残業予定時間数

などを記入して会社に申請書を提出させます。
申請書の内容について、上司(管理職)が審査をして不必要と判断した場合は、残業を認めずに帰宅させるようにします。この結果、従業員の残業を事前に管理するため、サービス残業を削減することができます。
従業員の意識に無駄な残業はできないという意識が生まれるという効果もあります。

5.固定の残業手当を払う

一般的な残業時間に応じた残業手当の支払いではなく、基本給の一部を一定時間分の残業手当として毎月固定の金額を支払うことにより、サービス残業を削減することができます。但し、固定残業時間手当に含まれる時間数を超えた残業分については、別途残業代の支払いが必要です。

例:基本給25万円+残業手当3万円
→基本給22万円+残業手当3万円(残業10時間分)

※この方法は支払の内訳の変更ですが、基本給の減額になるため、労働条件の不利益変更に該当します。従業員の個別同意や就業規則・労働契約書(労働条件通知書)等への記載が必要です。

6.賞与に反映させる

生計の為や評価の為という理由で、残業する従業員に対しては、賞与の査定で評価を低くし、賞与の支給額を抑制しましょう。

ただ、残業代を取り戻すために、賞与の額を抑えるのではなく、業績や残業数等の一連の総合的な判断の結果として賞与の額が決定することが大切です。
「残業=決められた時間内で仕事を処理できない効率の悪い人」という会社の方針・評価を通知することも必要です。

7.有給休暇を計画的に取得させる

一定の手続きにより、従業員の有給休暇を会社が計画的に与えることが出来ます。

繁忙期の有給休暇の取得は、他の従業員の負担を多くすることになり、サービス残業の発生につながります。閑散期の有給休暇の消化を勧めることにより、繁忙期の有給休暇の取得を防止することが出来ます。

ただし、従業員が自由に取得できる分として5日残す必要があります。同時に、有給休暇と別枠で与えていた夏期休暇や年末年始休暇を、有給休暇の計画的付与で取得させることも可能です。

※現状ある特別休暇を廃止して有給休暇の計画的付与で補うことは、従業員にとって労働条件の不利益変更に該当します。

そのため、従業員の合意や変更の合理性、代替措置等が必要になります。
大切なことは、従業員にきちんと説明を行い、その同意を得ることです。
会社による一方的な変更(特に不利益変更)は、労働問題に発展します。ひとたび労働問題に発展してしまうと、会社が設けた制度には実質はないと判断され、残業代の支払を命じられることになりかねません。また、会社の変化や法改正に合わせて、定期的に労働時間を把握して制度を見直すことも必要です。

橋本事務所では、十分な聞き取りをはじめとする綿密な事前準備を実施して、それぞれの会社にあったザービス残業削減策を提案しております。そして、継続的にサービス残業を削減するために、定期的に会社の実態調査を行い、運営状況を確認しております。

サービス残業について、ご不明な点等がございましたら、お気軽に橋本事務所までお問い合わせ下さい。

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